彼女の世界が変わらぬ理由
ノルマだったアクセサリー類五つ作成。
マリアは七宝焼きでペンダントトップを三つと、着物の帯留めを二つ作った。
お世辞にも上手いと言える作品ではない。
ただ、焼き上がると淡く柔らかな色になるのが楽しくて、気付けば熱中していた。
飛田が言っているのは、薄い青地に桃色の花を浮かべた帯留めのことだろう。
あの出来はマリア自身も満足していた。
「柚木くんは、美大には進まないんだったね」
「はい」
「そうか。…良ければ、僕のアシスタントをしてみないかい。もちろんアルバイト料は出すよ」
思ってもみない申し出に、マリアはポカンと飛田を見上げる。
シャツの首もとを緩め、若き芸術家は真摯な瞳をこちらに向けた。
困惑するしかなかった。