彼女の世界が変わらぬ理由
飛田と同じ冷やし中華をトレーに乗せ、向かい合って座る。
何だかピシリとスーツを着る彼に、冷やし中華は似合わないなと思った。
「不思議だね」
「不思議? 何がですか」
「柚木くんの絵だよ。似顔絵は、いつも描いているあの絵と雰囲気がまるで違う」
「ああ…」
いつも描いていた無題の絵。
しかし六月の終わりに描き上げたのを最後に、マリアはもうあの絵を描いていない。
七月後半から都内で開かれる展覧会に応募した。
数日後に結果が通知される予定だが、おそらくは一次審査も通っていないだろう。
「それにキミが作ったあの帯留め。暖かい色で良い仕上がりだったね」
「そうでしょうか」
「本来キミの作品は、そういう個性があったんじゃないのかな」
そう感じたよ。
微笑みながら、飛田は箸を割った。