彼女の世界が変わらぬ理由

マリアはイーゼルを立て、用意していたキャンバスを棚から出した。

教室の真ん中にイスを置いて、安東を促す。


「早速描かせて」

「え、ええっ? いまから?」

「安東さん、受験勉強があるでしょ。こういう時に、描いておかないと」

「そ、そう? うわあ。何だか緊張しちゃうね」


恥ずかしながら安東がイスに座りかけた時、後ろの扉が静かに開かれた。

そこに立っていたのは、とっくに帰ったと思っていた飛田だった。


「あ、飛田先生。こんにちは~」


安東がぺこりと頭を下げると、飛田も微笑んで頭を下げた。


「こんにちは。…あれ。もしかして絵を?」


真っ白なキャンバスを見てから、飛田はマリアに視線を移す。


「…最後の絵です」


そう答えると、飛田は複雑そうな顔をした。

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