彼女の世界が変わらぬ理由
そんな顔をされても困る。
マリアは目をそらした。
「そうか。…これからという時にすまないんだけれど。柚木くん、少しいいかい」
「…何ですか?」
「上に、お客が来ていてね」
「お客? あたしに、ですか?」
「ああ。…わるいね。柚木くんを少し借りるよ」
飛田は安東にそう言って、マリアの肩を抱き、廊下へと促す。
「安東さん、戻ってくるから」
振り返りそう言うと、安東はイスに座り大きく頷いた。
「うん。待ってるね!」
彼女の笑顔に見送られ、マリアは飛田と美術室を出た。
「あの…お客って?」
飛田を見上げると、彼は難しそうな顔をしていた。
何か焦っているのか、歩調はいつもより早いし、マリアの肩を放そうとしない。