彼女の世界が変わらぬ理由
これは私以外、知るところではありません。
中村はそう呟いた。
「盗作ではないかと、私は判断いたしました。しかし確証がないので、内密にことを進めたかったのです」
「ありがとうございました、中村先生」
黙っていた飛田が、深く頭を下げる。
中村は首を振った。
「私たち大人が下手に騒いで、若い才能の芽を摘むことになると忍びないですからね」
中村はまたため息をつく。
ひどく疲れているようだ。
「…もうおわかりでしょう、柚木マリアさん。あなたの絵ですよ。あなたの絵と、重なるのです」
しわがれた声に、鼓動が加速する。
マリアは汗をかいた両手を、強く握りしめた。
来たのだ。
ついに、この時が。
震えが指先から全身へと広がった時、応接室の扉が勢いよく開かれた。