彼女の世界が変わらぬ理由
憧憬の色
--
-----



柚木マリアは帰国子女だ。

幼い間の長い時間をフランスで過ごした。

両親の仕事の都合で日本に帰国したのが十年前の冬。

マリアはひと月、雪の多い片田舎にある、父方の祖父母宅に預けられた。

その時マリアは日本語が話せず、祖父母に言葉が通じないこと、両親がいないことが悲しく、毎日泣いて暮らしていた。

小学校にも一時編入したが、そこでもコミュニケーションを取るのは難しく。


「日本人のくせに外国語しかしゃべれないなんて」


と、いじめられた。

マリアがフランスに帰りたいと、心を頑なに閉ざしていたことも、いじめられる原因だったのだろう。

マリアは十年も前から、すでに孤独だったのだ。

そして彼女が一人で過ごす場所は、やはり美術室だった。

< 42 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop