彼女の世界が変わらぬ理由
その頃は絵を描くために美術室にいたのではなく。
ただ一人になりたいがためにいた。
窓際にイスを持っていき、その上に乗って外を眺める時間が、唯一安らげる時だった。
わずかひと月の間過ごしたあの田舎。
マリアは一人の少年と出会った。
名前は知らない。
三つくらい年上に見えた。
日本語がわからなかったから、会話を交わしたというわけではなく。
相手は何か話しかけてきていたかもしれないが、記憶には残っていない。
彼もよく、一人で美術室を訪れていた。
いつもスケッチブックを持っていて、美術室にある画材を使って絵を描いていた。
マリアを勝手にモデルにして、デッサンをしていたこともあった気がする。
やんちゃそうな笑顔の少年。
しかし泣いていたマリアの頭を撫でて、なぐさめてくれたりと、面倒見の良い少年でもあった。