彼女の世界が変わらぬ理由
「柚木さん。あなたは今回出展されたものと同じ絵で、昨年賞をとられたと聞きましたが」
「はい」
隠すつもりはもとよりない。
臆することなく答えると、中村は表情を和らげた。
「ならば先に描いていたのは、あなたでしょう?」
「そうだよ! なんたってマリアちゃんは、十年も前から描いてるんだから!」
安東の叫びに、マリアは首を振った。
彼女はわかっていない。
「いいえ。本当にあの絵は、盗作です」
中村と飛田は顔を見合わせた。
飛田はマリアの肩に手を置き、弱ったように眉を下げる。
「柚木くん。キミが何を思ってそう言っているのかはわからないが…。今回の件は、相手側の盗作だったんだよ」
「え…そんなはずは!」
「いや。向こうもそれを認めているよ」
「………うそ」
マリアは愕然とした。
飛田は嘘をついている顔ではない。
期待にふくれ上がっていた心は、空気の抜けた風船のようにしぼんでいった。