彼女の世界が変わらぬ理由
「なんだ森山、知らねーの? 飛田宗一郎は油彩もやるんだよ!」
「へぇ…」
興味がないので、相槌もおざなりになる。
いや、正確には興味を持ちたくないのだ。
右手がひどく、疼いてしまうから。
しかし久米はそんな十夜の気持ちなど知る由もなく、強引に肩を組んできて油彩科の棟へと歩き出す。
「おい久米…」
「森山いい時に来たな! 飛田宗一郎の講義なんか、めったに聴けるもんじゃねーよ!」
楽しみだなあ。
のんきにそんなことを言う友人に、十夜は何も言えなくなった。
仕方ない。
講義を受けるのはこれが最後。
終わったらすぐに、学生科に行こう。
そう決めて、十夜は大人しく久米に引きずられるように歩いた。
右手がズクズクと、痛む気がした。