Bitter Sweet
それからというもの。


私が張っていた予防線はむなしくも突破され、

むしろ妙に懐かれ、

家が近いのも裏目って、

すっかり高梨とは飲み仲間になっていた。


会社ではなるべく今まで通りに振る舞い、
面倒な誤解を周りにされないよう注意を払って。

飲み仲間になってることは社内では隠して。


付き合ってるわけでもないのに周りに隠すのもおかしいな、とは思いながらも、
高梨もそれには賛成していたから、
私に迷惑がかからないように気遣ってくれていたんだと思う。


付き合ってるなんて噂が飛び交ったら、一体どんな目に…と、考えるだけでめんどくさい。
それ位、ヤツは常に女の人に注目されてたし、お昼休みには囲まれていた。
社会人にもなって、そんな光景を目の当たりにするのも不思議だけど。
こんな、あからさまなモテ方するヤツ、初めて見たかもしれない。

しかも。
男性社員からの評価も悪くないのだ。
モテっぷりが半端ないので、ちょっとしたやっかみは受けてるようだけど、
仕事がデキるから正面から文句も言えない。
ノリもいいし、フットワークも軽いから、先輩たちからもかわいがられていた。

このパーフェクト人間が、
なんで私なんかに懐いてきたのか。


珍獣を飼い慣らしたような気分だった。

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