Bitter Sweet
一杯だけでいいから、飲んで帰ろう。

そう思って、久しぶりにいつもの飲み屋に顔を出す。


するといつもいる店員さんが、
久しぶりっすねー、とにこやかに迎えてくれる。

そして、
「よくご一緒してたあのイケメンも来てますよ~。」
と、入口からは見えづらい位置にいるらしい、高梨のいる方へ案内してくれる。


ハハ、どうも~、と店員さんに会釈をし、
やっぱり流れで同じテーブルへ。

連れてこられた私に気付き、
「わ、久しぶりー。」
と、少し嬉しそうに迎えてくれる高梨。



ーあの日以来、だ。
仕事では一緒にいたけど、プライベートな時間を過ごすのは。

「お疲れ~。ずっと飲みに来れない位、忙しかったからねー。あんたもでしょ?」
席につき、ビールを注文する。

「まーね。久しぶりに息抜き。ひかりさんも?」
「そ。」
「一緒に仕事してんだから、一区切りついた祝いで、飲みに誘えば良かったな、普通に。」
「…それもそうだね。」
お互いの顔を見合わせ、目を丸くする。


誘い合ってここに来たことはなかったから、思いつかなかった。

みんなの前では、そんな会話全くしないし、出来ないし。

メールとか、2人で打ち合わせしてる時とか、色々手段はあるのに。


自然と会うのが2人の普通になっていたのかもしれない。



まもなくビールが届いて、お疲れ、と改めて乾杯する。


「あ、そうだ。私、明日から2日位出張だから。」
「へ?聞いてないよ、オレ。」
「うん、私も帰り際に突然言われた位だから。急ぎで決めたんだよ。」
事の経緯を話す。

「榎本の代理か。…大丈夫?」
心配そうに私の顔を覗き込む。

「うん、しょうがないよね。高梨にも私がいない間、迷惑かけちゃうけど。」
「そんなのはいいけど。オレが心配なのは、有田さん。」

ドクン、と胸が脈打つのが分かる。
なんでこいつは、こんなに鋭いのか。


「…だーいじょーぶ!でしょ、多分。峰さんもいるし。」
高梨の視線が怖くて、目を合わせずにゴクゴクとビールを飲み込む。






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