Bitter Sweet
「誰と?」

探るような瞳で私の顔を覗き込む。

「…友達とよ?」

昂くんと、とは何だか言いづらくて思わず嘘をついてしまった。

無言で私を見てくる高梨。

ポーン、とエレベーターが三階に着いた音がして、高梨の視線から逃れるように扉から出た。


私の後ろから静かについてくるのが分かる。

部屋の鍵を取り出し、ドアを開けて、玄関の照明を付けようと手をスイッチに伸ばした。

その時。


後ろから入ってきた高梨の腕が伸びてきて、私の手を絡め取る。

「…っ?」

驚いて振り向くと、目の前には高梨の大きな身体。


絡め取られた手首ごと、クルッと身体を反転させられ、玄関のドアに少し乱暴に押しつけられる。


両手首はしっかりと高梨の手に固定されて、動けない。

照明がなく、真っ暗で、高梨の表情も見えない。


…何…?

なんか…高梨が、少し、怖い。


< 96 / 263 >

この作品をシェア

pagetop