新宿トライアングル



この店に来る客なんかに用は無い。



ただ……ホストの仮面を脱ぎたいだけ。



女を想えない自分をそういう奴もいるって、周りの言葉で慰められたいだけ。



俺が想う相手……そんなのたった一人でいい。



だから、



「君可愛いね~一緒に行かない?お小遣いあげるけど」



そう隣の客がすり寄ってきても、



「いや、あいにく金には困ってないんで」



と突っぱねる。



あんな脂ぎったオヤジになんて死んでも触らせるかっ。



それでも……こんなぶっきらぼうなヤツを眺めたいヤツがいるのか、この店に俺が通うようになってから客が増えたんだと譲二は笑った。



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