甘い香りを待ち侘びて


「今日のクリスマス会、子供たち大喜びでしたね!」


 午後7時。

 本日最後の園児のお迎えを終えて片付けをしている最中に、後輩のマコちゃんが頬を緩ませたにこにこ顔で惚れ惚れとそう言った。

 その顔は保育士というよりも、わたし達がお世話をしている保育園児とそっくりだ。
 童顔のマコちゃんだから、それはそれで可愛らしいけれど。


「どうしてこう、子供ってあんなに可愛いんですかね。サンタさんが出てきた瞬間のキラキラした顔とか、こっちが癒されちゃいますよ」


 マコちゃんがクリスマスツリーのてっぺんで存在を主張していた星飾りを取り外す。
 わたしもツリーにまかれた電飾を絡まないように丁寧に外していった。


「園長先生のコスプレサンタさん、やけに似合ってたもんね。あれは子供たちも大喜びになる気持ち分かるなー。羨ましい限りだよ」


 そう言って思い出したのは、昼間に行われたクリスマス会と園長先生のコスプレだ。

 御年60歳でちょっと(というかかなり)メタボ体型な園長先生がコスプレしてなりきったサンタさんは、想像以上に子供たちに大反響だった。

 サンタさんが登場した瞬間の子供たちの表情は、確かにいつもの倍増しの可愛さだった。まさに天使の笑顔。マコちゃんが言うこともあながち間違いではない。

 普段わたし達が相手しているときには、あそこまで素敵な表情は引き出せないからお手上げだ。
 赤い服を着た白髭のおじいさんのパワーは、本当に凄まじい。

 きっと子供たちは今夜、そのおじいさんを待ち侘びて夢の世界に旅立つのだろう。幸せな一夜になってくれたら良いなと思う。


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