カーテンの中で
親指が、私の唇を、リップでも塗るみたいに触れてくる。

「俺は、したいよ。キス」

と言いながら、彼の顔が近づく。

このまま、されちゃう……?

恥ずかしさと頭のバクバクが加速していって、目を閉じてしまう。

だけど彼は、本当に直前で止まって、訊いてきた。

「俺はしたいけど……そっちは?」

「……」

「したいって言ったら、続けてあげる」

おそるおそる見上げた彼は、とても、優しい顔で、急かすことなく、私を見てた。

やめてって言ったら、すぐにやめてくれるって、わかった。

それだけ、私って大事にされてるんだって思えた。

だから、今まで、簡単にキスもしなかったのかもって。
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