婚恋

決断の時

前々から、百恵の発想には時々ついていけないと思っていたが
今回の爆弾発言はまさにその頂点と言えるほどだった。

俺が春姫と結婚とか・・・今まで好きだとも言えなかったのに
どうしたらそういう結論になるんだ?

返事に詰まらせていると百恵は表情一つ変えずに
話を続けた。

「とりあえず式場決めて仮契約するの。その間に私は有村さんに
最後の告白をする。陸は、私の結果がどう出ても式のキャンセルが
難しくなった頃を見計らって、私との結婚がダメになったがキャンセルが
効かないから春姫ちゃんに私の代役を頼む。」
「はぁ?お前それ正気なのか?」
「冗談言えるほど時間ないんだけど・・・」
時間がない?
確かに時間はかかり過ぎているが時間がないのとでは
意味合いが違う。
どういう意味なのか聞こうすると
俺とは視線を合わせず、頬杖つきながら話し始めた。
「実はさ・・・縁談話が来てるのよ・・・私も若くないじゃん。
親がめちゃくちゃ焦っててさ、紹介できるような人がいないなら
父親の会社の部下でいい人がいるらしくってその人と・・・・だから
どうしたって有村さんに告白するのもこれが最後のチャンスなの」
「・・・・・」
だったら俺が・・・とは軽々しく言えなかった。
もしそんな事言ったら本当に紹介されて・・・・
「有村さんがダメだから陸・・・なーんてことあり得ないから
 同情とかいらないからね。私とあんたは同志みたいなもんなんだしね。
 とにかく、本気で春姫ちゃんとうまくいきたいなら死ぬ気でやんな。
 春姫ちゃんならあんたが困ってるって知ったら絶対協力してくれるはず。」
「なんでわかるんだよ。」
「彼女見てればわかるわよ。ばーか」

百恵は、はいこれとパンフレットを差し出した。
その式場の名前を見て何か引っかかりを感じた。
その様子を百恵は口角をあげフッと笑った。
「・・・春姫ちゃんって・・・ここで式あげようとしたんだよね」
「なんでおまえー」
なんでそんな場所まで知っているのかと聞きたかったが
「ばーか。最後まで聞きなさいよ。ここに春姫ちゃんを担当した
藤田さんって人がいるのよ。彼女ならきっと力を貸してくれるはず。」
・・・・ますます百恵という女がわからなくなった。
どうやってそういう情報を手に入れるんだよ・・・・

「どうするの?覚悟ある?」
そこまで調べてくれているのにやらない訳ないじゃないか。
「わかった。本気出していくよ・・・百恵には少し迷惑かけるけど
よろしく頼む」
百恵に頭を下げた。
多分こいつに頭を下げたのは初めてかもしれない。

すると百恵はいきなり立ち上がり
「じゃー式場抑えに行くよ!」
そう言って先に店を出た。
もちろん伝票は・・・・俺もち・・・・ 
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