婚恋

明日へのカウントダウン

式場につくと百恵は早速藤田さんを指名した。
どういういきさつで百恵が春姫の過去を知ったのかはわからない。
ここまできて問い詰めるのもなんだから
敢えて聞かないが、この藤田さんという女性の事も
どうやって知ったのだろう。
受付で、百恵は「○○の紹介で~~」と藤田を指名した。
この○○が俺にはよく聞き取れなかったのだが
○○で藤田さんは納得したように俺達の前に現れたのだから
百恵の言っている事はあながち間違いではなかったのだろう。

百恵からは余計な事は言わない。
私に話しを合わせておけばいいと釘を刺されていた。
だから俺はほとんど無口で相槌を打っているだけだった。
しかも百恵は話をじゃんじゃん進めていく。
本当にこのまま俺達結婚すんじゃねえの?って思っちゃうぐらいで
時々不安さえ感じた。

だけど正直、こんな事本当にうまくいくのだろうか
こんな手の込んだ事したにもかかわらず
春姫にあっさり断られたらどうするんだ?
百恵の「彼女を見てればわかるわよ。」は
やっぱり女同士だからわかるものなのか・・・・
俺にはさっぱりわからねえよ・・・
百恵が一生懸命藤田さんと話をしている間。
俺は春姫の事ばかり考えていた。



「ねぇ!もうちょっと仲のいいとこ見せつけないとだめじゃない!
なによさっきの・・・完全に自分だけ別世界にいたよね。
困るんだよ~~そういうの。次は頼むよ!もう・・・後…必要なのは・・・・」
何だか会社の上司に嫌みを言われている様な気分だった。
百恵は今後の予定を一人ぶつぶつ言いながら
俺の半歩先を歩いていた。

でも・・・俺の事はいいとして
百恵本人の状況はどうなんだ?
百恵からは何も頼まれなくなった。
もう・・・ここから先は自分の力で…って事なのか

「なぁ・・・」
「はぁ?」面倒臭そうに返事されるのには慣れたが
俺限定って言うのは嫌なもんだ。有村さんにはこんな返事しねぇのにな・・・
「有村さんにはいつ告白すんだよ」
ぴたっと百恵の足が止まった。
「・・・・明日」
「明日?」
これにも驚かされた。
「私の結果がどう出ようとこの計画はこのまま進めるから安心して」
振り返りもせず真っすぐ前を向きながら喋る百恵に
俺は何も言い返せなかった。

ただ、心の中で
頑張れ・・・と強く思った。
 
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