婚恋

別れと始まり

藤田さんからのアドバイスを受けながらの日々が続いた。
そして今日、招待状が出来上がった。

もらった招待状は2種類
新婦の名前が百恵のと春姫の2バージョンだ

これを郵送し終えたら次はブーケの注文を春姫にお願いするように
藤田さんが話を進めてくれる。

いよいよ今から本格的に始動する。
「次に会うのが・・・ブーケか・・・・これが済めば私はお役御免だね」
「・・ああ・・そうなるね」
百恵には本当にいろいろと助けてもらった。
俺が百恵にしてやった事は正直あまりない様な気がする。
少し前に、なんでこんなによくしてくれるのか聞いた。
百恵は、そんなのあんたのためじゃなく春姫さんのためときっぱり言った。
本当の運命の人が近くにいても意外と気がつかない人が多い。
春姫の最初の結婚相手の紺野さんも春姫の運命の人ではなかった。
とても近くに運命の人がいるのに気付いてない春姫に気付いてほしかったと。

正直ここまで百恵が春姫の事を考えていたとは思っておらず
申し訳なく思った。
ところで百恵の方はどうなのか・・・気になった
最近は俺らの事ばかりで有村さんとの事を聞いてあげる余裕もなかった。
「ところで・・・有村さんとは話進んでるの?」
するとさっきまで普通に喋っていたのに急に顔をピンク色に染め
「うん・・・来年の春に・・・ハワイで・・」
「ハワイ?!」
思わず声を上げてしまった。
どうしてハワイなのか尋ねると・・・・

結婚式ドタキャンして別の男と結婚するって事になってる百恵が
堂々と国内で式を挙げるのはちょっと・・。それが作り話でも・・・・というのが
有村さんの考えだったらしい。

俺のせいだ・・・・
「もう!陸のせいじゃないって!私、海外での挙式に憧れていたの。
ねえ!陸たちもさ、もしこの計画が成功したら私たちの式に来てよ!
新婚旅行がてら・・・・」

この計画の結末がどうなるかわからないのに軽々しく返事出来ず。
言葉を濁した。
だが百恵は俺とは正反対で
その時は春姫さんにブーケ作ってもらいたいな~~とまで言った。
ここまでポジティブになれたらと思った。


それから・・・・
招待客への郵送を済ませてから数日が経った頃
藤田さんからブーケの打ち合わせの日を今週の土曜にと連絡が入った。

ここからが本当のスタートだ。
そして百恵とはこれが最後の日でもあった。

約束の時間30分前にいつもカフェで俺と百恵は打ち合わせをした。
今回はブーケと式のイメージを話すから
俺はあまり話をしなくてもいいと言われた。
そして百恵は
「これが最後の日だからね。これから先何かあれば私じゃなく
藤田さんに相談して頂戴。最後まで見届ける事が出来ないのは残念よ。
だってこの計画を考えたのは私なんだもん。だけどドタキャンした相手と
こうやって普通に会うのは不自然すぎるからさ・・・・今までありがとね」
「お・・おい。お礼を言うのは俺の方だよ・・・ありがとう」
偶然だが同時に手が差し出されていた。
俺達は初めて握手をした。
「あとさ・・・・結果だけは連絡ちょうだいね。それが済んだら
私の番号とメルアド削除していいから・・・」
一瞬だが寂しいと感じた。
男女間に友情はないと言うけれど俺はあったと思いたい。
百恵と出会わなかったら俺はただぐじぐじしたまま何の進展のない生活を
送っていたに違いない。
それを変えてくれた百恵には感謝してもしきれない。

時計を見るともうすぐ約束の時間だ。
俺は席を立つと
「では、行きますか、僕のフィアンセさん」
「いきましょ~」
 
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