婚恋

衝撃の告白

・・・・なんなの?この気まずさは・・・
大きな部屋にタキシードとウエディングドレスを着た
男女が微妙な距離で視線も合わさず
しかも無言って・・・

初対面でもあるまいし
でも・・・なんて話を切り出せばいいのだろう。
一応結婚式の誓いの言葉で、共にその生涯を送りますか?に
はいって答えちゃったんだしね・・・
私一人が先に着替えてさよならは・・・できないよ。
でもみんなが帰ってから一言も話してくれないのって
・・どうなのよ。
ええい!
「陸?」
勇気を振り絞って呼んだ。
「何?・・・」
そうか・・私から何かを質問しないと話は成立しなさそうね。
とりあえず順を追って話を聞かなくっちゃ。
そして私もちゃんと言わなくっちゃ・・

「そんなに離れた場所にいたらちゃんと話せないからこっちに
・・・・来ない?」
あ~~!なんか言われるのはいいけど言うのって恥ずかしい。
陸はハッとしたような顔をしながら
近づいてくる。
式の時は緊張のあまりよく見れなかったけど
陸のタキシード姿は思った以上に素敵だった。
白に近いグレーで細身のパンツはただでさえ長い脚なのに
より長く見えショートフロックコートとの相性は抜群だった。
できれば私以外の人の為には着てほしくない・・
率直な感想だった。
「タキシード似合ってるじゃん」
少し照れながら陸を褒めると
「今頃それ言うのかよ・・・」
と少し呆れた様子だったが目は優しかった。

ずるい・・そういう目で見られるとドキドキして喋れなくなる。
「だ・・だって緊張してたし・・そんな余裕なかったもん」
それが正直な気持ちでもあった。
「隣・・・座っていい?」
陸が私の座っているソファーの前に立った。
「うん・・」
陸はゆっくりと腰掛けると私の顔を覗き込んだ・・
「びっくりした?」
「え?」
「結婚式の誓いの言葉で百恵の名前じゃなく春姫の名前が呼ばれた事」
私は首を大きく頷いた。
「びっくりしたよ。・・そうよ!なんで私の名前だったのよ。
 周りも驚きもせずに黙って見てるし・・・まるで知らないのは
私だけ・・・・みたいな・・・」
「嫌だった?」
「え?」
「内田春姫さんあなたは椎名陸さんを夫とし
神の御定めに従い聖き婚姻を結んで
共にその生涯を送りますか・・って言われて嫌だった?
俺は・・・うれしかったよ。春姫が俺と共に生涯を送りますか?
にはいって答えてくれて・・・春姫は?嫌だった?」
嫌な訳ないじゃない。
でも信じられなかった。だって陸はずっと百恵さんが好きで
結婚しようとしてたんだから・・・私に対して
愛情じゃなくて情がうつったのでは?って・・・

「うれしかったわよ。だって・・・だって私はー」
陸の事がすきだから・・・そう言おうとしたがその言葉は陸の
手で塞がれた。
「ごめん。それは後でじっくり聞かせてもらう。
その前に俺の話を聞いてほしい・・・」

陸は手を離すと私の手を絡ませるように握ると
その手を自分の口元に運び唇に当てた。
そして視線を私に向けた。

私の心臓は今にも飛び出してしまいそうだった。

「俺は・・・ずっと・・ずっと春姫の事がすきだった。
お前しか見てなかった。もし告白して断られたらお前との
繋がりが無くなるのではないか・・そうおもったら
友情の方を取った方がずっと近くにいられる・・だから
最初は友情を選んだんだ。だけど、春姫の結婚がダメになったと
知った日・・・我慢が出来なくなった。誰かに取られるくらいなら
俺の物にしたいと・・・でもいざとなるとそれが出来ずにいた。
そんな時百恵と知り合った。・・・・そして俺はお前の気を引くため
百恵に・・偽の彼女になってもらったんだ」

「はい?」
「だからあれは全部・・・お芝居だったんだよ」

私は驚きのあまり声も出なかった。 
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