婚恋

目覚めた時には・・・

「ん・・んんっ・・」
「春姫?・・・春姫!」
ぼやけていた視界が徐々にはっきりしてきた。
そしてその視界の先に見えたのは心配そうな顔をした陸だった。
「あれ?・・・・わたし・・・どうしたの?」
周りには私の両親と陸の両親。
そして藤田さんに松田君、藤堂君・・・・
なんで?こんなに人がいるんだろう・・・
っていうか何で自分がソファーで寝ているんだろう・・・・
ぼやけた頭で考えた。

・・・
・・ん?
・・あれ・・・私って結婚式出てたよね。それで・・・
百恵さんじゃない私の名前を呼ばれて気が動転してて
そのまま指輪の交換と・・・誓いのキスしちゃって・・
それで・・それで・・・
「ええええ!私もしかして何かした?」

みんなが一斉に、憶えてないの?と声を合わせた。
もう苦笑いするしかなかった。
「陸が春姫にキスしたら気を失ったんだよ。」
松田君に言われて思い出した。
・・・そうだ!私、もういろんな事がいっぱいいっぱいになって・・・

申し訳ない思いで陸の方を見ると、バツの悪そうな顔をしながら
窓際へと移動・・・と言うより逃げた。
だが、一体私はどのくらい気を失っていたんだろう。

正面の壁にかかってる掛け時計を見て私は自分の目を疑った。
披露宴の時間はとっくに過ぎていた。
私は飛び起きて藤田さんの名を呼んだ。
「藤田さん!披露宴は?・・・」
藤田さんは首を横に振った。
「ごめんなさい。今日は、予定がびっしりで・・・
本当は無理やりでも始めようかと思ったんだけどね・・・
陸君が春ちゃんの事を思って・・・それで
みんなにはお食事とかはしてもらって披露宴と言うよりは
飲み会に様なノリでやったの。もちろん引き出物もお渡して」
「うそ・・・・」
信じられなかった。陸が、一生懸命作った映像も、メンバー全員で
練習した曲も私のせいで台無しになった?
悔しくって目が潤む。
そんな私を母が隣に座り肩を抱きながら微笑んだ。
「披露宴は出来なかったけどとっても楽しかったのよ。
陸君は普段着に着替えてね、新郎としてではなく
まるでスタッフの様にみんなが楽しめるように盛り上げてくれたのよ。」
「え?・・・でも今は・・・」
陸は式の時に着ていたタキシードを着ていた。
「陸君はね、春姫が起きた時ちゃんとした姿でいたいって言って、
また着替えたのよ・・ね?」
母はニヤリと陸の方を見るが陸は手を顔に当て恥ずかしそうに
窓の方へと移動した。

「とにかく、春姫が元気になったみたいだし・・・
 ここで解散にしましょう。」
父の一声でみんながそれぞれ挨拶を交わし帰り支度を始めた。
「内田さん!まだ飲み足りないでしょ~今から・・どうです?」
「椎名さん!いいね~~飲みましょう飲みましょう~」
陸のお父さんとうちの父はどうやら意気投合した様だった。

「春姫・・・お母さんたちも着替えを済ませたら帰るから・・・」
「え?帰るからって・・・私だってー」
帰る・・そう言おうとしたが母の目がそれを拒んだ。
私はそれ以上何も言えずそのままみんなを見送る形となった。

陸は・・というとさっきからずっと私から離れた場所で
松田君達と話をしていた。
目が覚めた時は近くにいてくれたのに
起きた途端放置プレイですか・・・・
さっきのあの結婚式がまるで夢の中の出来ごとの様に思えてきた。

「春ちゃん」
後ろから藤田さんが声を掛けてきた。
「藤田さん・・・本当にごめんなさい・・・いつも
迷惑ばかりかけちゃって・・・本当に私って・・・
前回はドタキャンそして今回は披露宴が台無し・・・
藤田さんのおかげで4つのsomethingが揃ったのに
私がこんなことになって・・・幸せ・・以前の問題よ・・・」
悔しいやら悲しいやら・・・
「なーにいってんの?・・・幸せはこれから掴むものよ。
 ちゃんと自分の思いをぶつけなさい。あなたの結婚式は
まだ終わってないんだからね。」
「藤田さん・・・・」

部屋に残っているのは私を含め、陸、松田君・・そして藤堂君に藤田さん。
藤田さんは陸と喋っている松田君と藤堂君に近づくと
何かぼそぼそと話をし、話しおえると
帰り支度を始めた。

「春姫・・・」
「松田君・・・藤堂君・・・」
「今日の春姫・・・めっちゃ綺麗だったよ。」
松田君の言葉に頬が赤くなる。
「あと・・・あれもよかったな」
「あれ?」
あれの意味がわからず首をかしげると
「即席で作った思い出アルバム?あれ・・・めっちゃよかったよ
 もし春姫が見てないなら見せてもらいなよ。」
「・・・・うん・・・」
そっか・・・みんな見たんだ・・・・
「春姫・・俺ら帰るな。悔しいけどやっぱ春姫には陸が
 合ってるって実感させられたよ。」
「幸せになれよ」
「松田君・・・・藤堂君」

正直まだ実感する以前の問題だった。

聞きたい事が山ほどあり過ぎて・・・・ 
< 59 / 67 >

この作品をシェア

pagetop