婚恋

もう一つのサプライズ 2

「どういうこと?」
結婚式は済んだのに何で?
陸は私の手を握った。

「途中で気を失った奥さんと2人だけの結婚式をしたかったんだ」
私は陸の顔を見上げた。
「2人だけ?」
「そう・・神父も誰もいないけどさ・・・藤田さんに相談したら
 ここを手配してくれてさ・・・本当にあの人には頭が
 上がらないよ」
陸は握ってない方の手からブーケをさしだした。
「あっ!」
「気を失ってブーケトス出来なかったしね」
苦笑いするしかなかった。

そして一旦繋いだ手が離れると陸がチャペルの扉をあけた。
そして目の前に広がる景色に動きが止まった。
祭壇奥は一面ガラス張りになってそれは天井まで続いていた。
そこから見る景色はまるでプラネタリウムの様だった。
「星が出ててよかった~~」
ホッとするような陸の声に振り向くと
「ここさ、藤田さんが式を上げた場所だったらしくてね、
 ここ、山の中だけど、下をみると・・ほら、湖になってんだよ。
 だから昼間は湖を一望出来るようになってるの。
ま~~、それはそれで素敵らしいんだけど
 夜は天気が良けりゃ~ここから上全部に星が広がるって聞いてたんだよね。
 どう?気に入ってくれたかな?」
私は言葉も出ずただ頷くだけだった。
その表情に陸は満足した様だった。
「さぁ・・・始めますか?お姫様?」
「もう・・・それ何のプレイなの?普通にしてよ~~
 って言うかどうするのふたりでって・・・」
すると陸はにやりと笑うと私の手を掴んで祭壇前へと進む。

そして一度咳ばらしをすると
「では、只今より2人だけの本当の結婚式を始めます。
 う~~ん。讃美歌とかそういうの飛ばすね!
 で、いきなりだけど・・・」
なんだかかなりゆるい結婚式だけど・・・・
陸とならなんでも最高に思える。
「では・・・結婚の誓いからいくね。」
結婚式の時に神父が読み上げた通りに言い、それに私たちは
互いにハイと答えた。
「指輪の交換は?」
そう尋ねると陸は首を横に振った。
「それはなし。だってもうこの指輪は一生外さないって俺決めたから。」
そう言って私の指を手で撫でると
「春姫も極力外さない事・・・いい?」
かなりの至近距離で囁かれドキッとしてしまう。
「うん・・・」
陸は指輪から視線を私に向けると口角を上げた。
「じゃあ・・・誓いの・・・キスしようか。誰も見ていなんだから
 覚悟しろよ。」
陸は私のブーケ―を祭壇に置くと片方の手を指に絡ませた。
そしてもう片方の腕で私を抱き寄せた。
「やっと一緒になれる・・・もう離さないから・・いいね」
陸は私の返事も待たずに唇を重ねた。
最初の結婚式とは全く違う。
大人のキスだった。
何度も角度を変え私の呼吸を乱していく。
からめられた手に力が入るとそれに答えるように
キスは激しさを増す。
「そんな色っぽい顔・・・反則だよ」
反則は陸の方だと言いたいがそんな余裕すら
与えられず私は陸のキスに全身がとろけそうになった。

「・・・・こんなの・・結婚式・・・のキスの・・・レベルじゃんないよ」
悔しい・・キスだけで息が上がるなんて。
陸は満足そうな顔を向けるとおでこにもう1度だけチュッとキスした。
「ざまあみろ。俺を待たせたバツだ!」
「な・・何がよ。そっちだって私の心を弄んだんじゃない!」
「だって俺、春姫が俺の事好きだったなんて知らなかったしね・・」
そう言いながら陸はポケットから封筒を取り出した。
まさかまた百恵さんから?そう思いながら
受け取ると以外にも普通の茶封筒だった。
「なによこれ・・」
「いいから・・みてよ」
口を尖らせながら封筒を開けるとそこには
婚姻届がはいっていた。
「本当ならさ結婚証明書に署名するんだろうけど・・・
 やっぱ俺達にはこれかなって思って・・・気が変わらないうちに
 書いて・・・」
そう言って陸はペンを差し出した。
よく見るとほとんど書かれており私の書くところは自分の名前を書く欄だけだった。

今まで生きてきた中でこんなに自分の名前を書くのに緊張したのは
初めてだった。
しかも陸ったら間違ったら全部書き直しだからなと
脅してくるし・・・

「書けた!これ提出したら私、椎名春姫になるんだね」
慣れない名前に照れてしまう。
そんな私を陸はうれしそうにほほ笑んでた。

そして・・・
封筒に婚姻届をしまうと。
陸の口角がさっきよりも上がる。
「よし!これで俺達本当の夫婦になれたんだよな!」
「うん」
「じゃあ~~春姫は俺の物だ!」
急にガッツポーズする陸に思わす笑ってしまった。
だが陸はその口角をさらに上げ
「よっしゃ~~!これでこのウエディングドレスを俺だけが
 脱がせれるんだよな!」
「え?」
「え?じゃないの。俺はこの日をどれだけ待っていたか」
そういうと私の腕を掴み無理やり車に乗せたのだった。 
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