十年戦争
「またここに来たの?カイ」
図書館を睨みつける男の子…カイに近寄る同じ歳くらいの女の子。

「何だよ。ユリ。カンケーないだろ?」

「どうせ。また本でも破っちゃたんでしょ」

「…そうだよ」

「どうしてそんな事するの?」

「あんな薄っぺらい本にキレイな過去だけを残しておかしいとは思わないか?歴史ってのは全てのパーツが揃ってそう呼べるんだ。あんなもの無い方がいい」

「カイは戦史が好きなのね」

「違うな。興味あるのは英雄だけさ」

その言葉は時を止めたかのように、全ての動きを静止させた。

「俺はセラを越える英雄になりたいんだ。そして、セラも見なかった青空をこの目で見る」

二人はゆっくり空を見上げた。
そこに映るモノは、旋回する戦闘機。工業都市特有のスモッグ。濁ったゴチャゴチャとややこしい空だった。


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