Always
何故だか流れた不穏な空気に、ピーッとやかんが悲鳴をあげた。

お湯をわかしていたことを思い出した。

ガスを切って、悲鳴をあげているやかんを止めた。

「――ごめんなさい…」

呟くような小さな声で、彼女が言った。

「えっ…」

何を彼女は謝っているのだろう?

自分の指が僕の手をさわってしまったこと?

手伝おうとしたこと?

それとも…8月のあの日のことを謝っているのだろうか?

「きょ…今日はもう、帰ります!」

「えっ、あの…」

次に出てくる僕の言葉を聞きたくないと言うように、芹沢さんは机の方へ逃げる。
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