ハリネズミの恋
「笑うに決まってんだろ。

俺ら、完全に太の存在を忘れてたんだからー」

俺がそう言い返すと、
「うわーっ、今ので俺傷ついたわー」

太は胸に手を当て、おおげさなリアクションをした。

「お前ら、今日のライブ絶対観てろよー?

ビックリし過ぎてアゴ外すんじゃねーぞー?」

太はピシッと人差し指を俺と針井の前に突き出すと、宣言するように言った。


ライブが始まった。

俺と針井は観客席の1番前に座っていた。

「思ったよりもお客さんがきたね」

針井がささやくように俺に話しかけた。

「そうだな」

後ろの方に視線を向けると、立ち見をしている客もいる。

観客席はすっかり満員だ。
< 123 / 297 >

この作品をシェア

pagetop