揺れる恋 めぐる愛


電車に乗った。立ったまま……

車窓の街の光を眺める。

出会いで俺はタッチの差で遅れを取り、それからはもう、ただただ君の幸せを願うことで

自分の気持ちを押し込めて誤魔化した。

略奪したって君ならなびくことはないだろう。

そんな君だからこそ、俺は好きになり……

心から愛している。

その証拠に、アイツがいなくなってどんなに時間が経過しても、

その熱量は下がってきていても、君は諦めない。

そう……

諦めようとしない。

それは君の持つ美徳で、俺にとっては絶望の種だ。

その種に、俺はこともあろうかせっせと水や栄養を運んで成長を助けてしまっている。

それ以外に、どうやって君に接したらよいのか、

アイツをダシにする以外どうやったら会えるのか、いまだにわからない。

ほんの些細なことで拒絶されるかもしれないことに怯えている。


こういうことを考え始めると、結局堂々巡りで、何処かにたどり着くことはない。

諦めない君を……

諦めない自分。諦められない俺。

溜息が出た。

そこで、ドアが開き電車を降りる。

酔いが回ってきた感じがした……

とりあえずベンチに腰掛ける。

酔いに任せてこのまま眠ってしまおうか?

そうすれば夢ぐらいは俺の思う通りの世界が見れないだろうか?
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