揺れる恋 めぐる愛


気持ちを切り替えようと起き出す。

手短に身支度をしてそれから24時間スーパーに向かった。

仕込むほどの余裕はないから、即席でもできるものになるが……

彼女はいったい何が好きなんだろうか?

そう考えると自然と口角が上がった。



たぶん、出来たものを見せたら驚いて固まるんだろうな。

まさか俺が紅葉狩りにわざわざ女を誘おうなんて。

彼女が熱を出してからは、直接は会っていない。

ただ、この頃少し青白い顔をして会社にいるのは見た。

結構長い間様子が変わらない。

何かに悩んでいるようだから、墓参りのついでの気晴らしに付き合わせてみるのもいいだろう。

だからといって弁当を作ろうと思う自分に笑いがこみ上げてくる。



不思議な女だ。どうしても気になる。

他人にほとんど興味なんてなかったことがウソのように

心がざわざわとさざめく。

どうせなら、俺は青白く沈んだ顔より、

穏やかにほほ笑む笑顔が見たかった。

果たしてそんな顔を俺に見せてくれるかわからなくても、

望むくらいはいいだろう。

好きな女のそんな顔を俺はもう、しばらく見ていない。

せめて気になる女くらいはと思うのはわがままなんだろうけど……
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