揺れる恋 めぐる愛
10
「主任はどうしていつも唐突なんですか?」

私は、寝起きの髪をとかしただけの姿で、主任と向き合い、

諦めと怒りの入り混じった気持ちで、しかたがなくそう聞いた。

「どうせメールしたら、逃げるだろう」

確かに見透かされている……

それにしてもあんまりだ。

「紅葉を見に行かないか?」

「はぁ~?」

「10分で用意しろ」

「放っておいてください……」

「お前、この頃どこか行ったか?」

「いえ……」

「こもりっきりは悪いぞ。いい季節だ……」

「私が予定があるとか思わないんですか?いないかもしれないとか……」

「居なければ一人で行けばいい」

「一人で紅葉?寂しすぎますよ」

「じゃ、ついてきてくれ。暇だったら……」

「暇だったらでいいんですか?」


私には、どうせ拒否権はない。

いるのがわかったからにはこの人は必ず連れて行くだろう……

主任を見上げると、少し寂しそうな目をした。

本当にこの人はズルイ。

「いや……

来いよ」

「……相変わらずですね」

私は、少しの間考えをめぐらせた。

なかなか1人で遠出する元気も正直ない。でも気分転換は必要だよね。

昼間から何かするほどは、いくら主任でも鬼畜じゃないはず……

断って、このまま家に上がり込まれる口実を作ってしまうよりは……

ましかもしれない。
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