モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~

「気になりますよ、沙羅。
何か言いたいことがあるのでしょう?」

「う、ん…。…あの…ね…。
わたし、お義兄さまとお姉さまが
朔夜様の名前を呼ぶの、
残念な気持ちなの。」

「はい?」

「だって、朔夜様が、名前を
呼んでいいって言ってくれたのは
わたしだけだったから、
せっかく一人占めしてたのに、
そうじゃなくなって、
残念だなって思ったの。
…だけど…。」

朔夜の顔を見て、少女は
ふふっと可愛らしく微笑んだ。

「なんです?」

「だけど、お義兄さまとお姉さまに
朔夜って名前を呼ばれた時の、
朔夜様のお顔が、とっても
嬉しそうでかわいいから、
それを見られるなら
がまんしようと思って。」

可愛らしい笑顔でそう言った
沙羅は新しいクッキーをつまむ。

それを見ながら、数秒遅れて
言われたことを理解した朔夜は、
珍しく顔を赤くして、言った。


「そんなこと、ぜったいに、
あるわけがないでしょうっっ!!」
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