love letter~章吾~

キスしたに違いないであろう聡の唇を、自然と眺めていると、目の前に俺のノートが突き出される。


「―――?」


尾関が憮然とした表情で、「ほら、あんたのノートよ」と言わんばかりの横着な態度で俺にノートを差し出していた。


なんだ、こいつ。

尾関のくせに生意気だぞ?


俺は指先でノートをつまみあげるようにして受け取った。

尾関は一言も俺に声をかけずに、くるりと背を向けてスタスタと立ち去っていった。



「なんだ?今の……」


いつもとは明らかに違う尾関の態度を目の当たりにした聡は呆然としていた。


「さぁな。おおかた、誰かに吹き込まれたんだろ?『押して押して、引く』ってな」

「あー、なんかそれ、中学ん時に女子が話していたなぁ」

「だろー?そういうテを今頃使うって、あいつ、どんだけ遅れてんだよ」


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