幸せをくれた君に
場所は俺と友人が、その頃、よく行っていた居酒屋。

チェーン店で、格安の酒を提供してくれるそこは、いまだ給料もたかがしれている俺達にとって、ありがたかった。



「へぇ~すごい。IT企業って、頭いいんだぁ」

そんな適当な相槌を酒くさい息でうつ女。

「IT企業…なんて最近は珍しくもないよ。そんな言葉にひっかかると男に痛い目にあうよ」

俺の隣で、俺にしなだれかかるように座る女への忠告。

「それぐらいは分かりますよ~」

「そう?なら心配ないね」

なんて言いつつ、妙に冷静な俺の頭。

(今日は、この女でいい…)

少しきつすぎる香水には、嫌悪感があるが、見た目は悪くない。

俺は彼女の耳元にそっと囁く。

「ミカちゃん。
俺、先に出て待ってるよ。
…その気なら、おいで」

俺の意味ありげな言葉に女は弾かれたように俺を見る。

俺は、彼女に微笑み、そして、一足先に席をたった。
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