幸せをくれた君に
思い過ごしかもしれない。
つまらない嫉妬かもしれない。

君が久賀のことを思い出す眼差しが、透明だったから。

大切な何かを探すようなそんな雰囲気だったから。

君の中に、確かに久賀という男の存在があることに気づいてしまった。



『武田君がね亜由美のこと好きなみたいなの。けど、亜由美は落とせないだろうな』とか。

『高橋さんって人、本社で営業トップ取ったんだよ』とか。

君から聞いたたくさんの話。

その中で一度も出てくることがなかった久賀という名前。


それは、偶然だったのだろうか。


「優しい人かな……んっ」

俺は言いかけた理沙の言葉を封じこめるべくキスをおとす。

「…ちょっと、待って。シャワー……」

キスの合間に彼女は苦しげに伝えてくる。

「いいから」

俺はそのまま彼女をソファーへと押し倒す。
< 32 / 67 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop