幸せをくれた君に
「久しぶりね、美馬さん」


二人がいなくなると、彼女はそう言った。


俺は息を呑み、彼女を向き直る。







理沙、君は知っているだろうか。


俺は、この時、いや、この瞬間まで、君との未来を信じていたんだ。


『なんとかなるだろう』

なんて、甘い言葉しか考えられない俺は、本当に甘い、まだまだ子供だったのだ。


きっと、君との未来は、この日に、いや、あの夜からなかったのかもしれない。


それに気づかない振りをするのが、俺にできる精一杯のことだったのだ。
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