幸せをくれた君に
「じゃあ、さようなら」

ようやく来たタクシーに乗り込もうとする彼女に、俺は素早く名刺を渡した。

プライベート用のそれ。

「よかったら、連絡して」

彼女は、一瞬迷ったように名刺と俺の顔を見比べたが、何も言わず受けとった。

そして、彼女を見送った直後、ミカちゃんが店から出てきた。

「ごめん、待った?」

「ううん、別に。いつまでも待ってるよ」

なんて、そんなの嘘。

ミカちゃんのことを一瞬、忘れていたのも事実。

「じゃあ、いこっか」

そんな俺の言葉に、ミカちゃんは微笑むと俺の腕に手をまわしてきた。

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