jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
わたしは、斜め下を向いて、無言で第2ボタンを外しにかかった。
このボタンが穴を潜ってしまうと、下着は透けて露わになるだろうと覚悟したそのときだった。
「蕾、ストップ! その状態でいて。そのままだよ」
信じられない言葉を聞いたあと、もっと信じられない音が聞こえてきた。
なんと、カメラのシャッター音が響き渡ったのだ。
「何してるの? 香さん・・・・・・恥ずかしいから、早く終わらせてよ」
「ごめん、ごめん。僕はね、蕾がボタンを外す瞬間、その艶めかしい姿が見たかったんだよ。残念だけど、僕はそこら辺の野蛮人じゃないからね。徐々に徐々に理性を剥ぎ取っていく方が、僕には合っているんだ。それに、僕にはまだ、蕾を犯す権利はないからねぇ」
クスクスと笑い声が聞こえた。
香さんは悪魔だ・・・・・・。
脱がされてもいいなんて思ってしまったわたしの気持ちに、きっと気付いているだろう。
知っているくせに、あえてわたしを燻り、弄ぶのだ。
アングルを変えて撮影しているのだろう、キンモクセイの香りを所々に飛ばしながら、シャッター音を鳴らし続けていた。

「さぁ、撮り終えた。だけど、まだ動いちゃだめだよ。綺麗だね、蕾・・・・・・。陶器のような滑らかな白い肌に、吸いつくような黒髪・・・・・・。瞳も唇も色っぽくてさ。待ってて、僕がちゃんと服を着せてあげるから、そのままでいて。僕は蕾を割ったりはしないよ。だから安心してね」


わたしは優しい悪魔が大好きだ。
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