jack of all trades ~珍奇なS悪魔の住処~【完】
志音は、白黒はっきりしている。
事を即座に明確にさせられなければ、人であろうと物であろうと、切れる人なんだ。
「何年もの思いがあるから、すぐに気持ちの整理はつかないよ。やっと、秀斗と別れたのに・・・・・・。次は香さん・・・・・・。一気には無理だよ。でも、出来る限り努力はしたいと思ってるよ」
そのとき志音にキャッチが入ったようだ。
「蕾、ごめん。あとでメールで返す」
電話はプツリと切れてしまった。
(急用かな? そうじゃないと、志音が話の途中で電話を切るわけがない)
そう思いながら、渋々携帯を机に置いた。

1時間後、志音からのメールが入った。
『ごめん。蕾。友人からだったんだ。と言っても最近ネット上で知り合ったばかりだ』
そう聞いた途端、一気に嫉妬と意趣が胸を焦がした。
それは嫌な意味での火傷だった。
わたしの勢いは止まらないだろう。
頭で考えるよりも先に、指が動き出した。

『どうして、最近友達を作ったの? わたしは頑張って変わろうとしているときなのに』
返事はすぐに返ってきた。
『蕾と出会う前に、あるサイトで友達募集をかけていたんだ。返事が最近になってきたんだ。ただそれだけさ』
やりとりは止めどなく続いていく。
『会う約束はしたの?』
『あぁ』
『どうして?』
『蕾のことばかり考えると、苦しくなるから。息抜きだ。恋愛感情ではない』
(今はそうじゃなくても、先は分からないじゃない・・・・・・。わたしには、香さんとは友達関係でもだめだと言うのに・・・・・・。でも、志音は、わたしよりその人と付き合った方が幸せかもしれない・・・・・・)



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