てのぬくもり





「立てる?帰ろう」



ス…と手を差し伸べてくる。



でも私はその手を取れない。



「私に返る場所なんてないよ…」



家に帰ってもお父さんもお母さんもいないんだから、帰ったって仕方ない。




『帰りたくない。』


ただ私の胸に、その一文が重りとなってずっしり体を重くする。



「あるよ。だから帰ろう」



「無い!あるのは真でしょ!?真こそ帰りなよ。おじさんもおばさんも待ってるよ」



誰もいない家に帰っても、寂しいだけ。



待っていてくれる人がいるんだから、帰るべきは真の方よ!





< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop