てのぬくもり
「立てる?帰ろう」
ス…と手を差し伸べてくる。
でも私はその手を取れない。
「私に返る場所なんてないよ…」
家に帰ってもお父さんもお母さんもいないんだから、帰ったって仕方ない。
『帰りたくない。』
ただ私の胸に、その一文が重りとなってずっしり体を重くする。
「あるよ。だから帰ろう」
「無い!あるのは真でしょ!?真こそ帰りなよ。おじさんもおばさんも待ってるよ」
誰もいない家に帰っても、寂しいだけ。
待っていてくれる人がいるんだから、帰るべきは真の方よ!