光の思い出 - happiness&unhappiness -
さまざまなオブジェに取り付けられた電飾の数々。
サンタさんや子供に人気のキャラクターの形をしたものが電飾で作られていて、思わず見とれてしまう。
色が変わるものもあって、移り変わる光の反射に引き寄せられた。
人混みに乗じて3人からはぐれることだって出来るというのに、そうすることを躊躇ってしまう。
この広場は私をそういう気持ちにさせた。心の奥の隅っこに追いやったものを、光の波が刺激する。
ふと、大きなツリーの前で足を止めた。
クリスマスムードたっぷりな赤と白と緑の光が、ちかちかと眩い光を放っている。
近くで流れるクリスマスソングが、やけに懐かしかった。
幸福と不幸の思い出が、一遍に私の中で駆け巡る。
「スゲー、綺麗だな」
すぐ近くで聞こえた声に肩がびくりと震える。
慌てて右隣に顔を向けると、戸田くんがツリーを見上げていた。口が半開きになって、イケメンが台無し。
「……透子は?」
周りをキョロキョロと見渡すものの、戸田くんにぴったりと張り付いてはずの透子の姿がない。ついでに片山くんの姿もなかった。
私と戸田くんの周りを、たくさんの人が通り過ぎていく。
「あの2人とははぐれたよ。有美の姿を見失わないようにするだけで精一杯だった」
戸田くんの瞳が私を捕らえる。下の名前を呼ばれて驚いている私を見て、にやりと笑っていた。
……嫌な男だ。性悪すぎて、憎まれ口さえ叩けない。
「……孝太も、はぐれてくれたら良かったのに」
だから代わりの反抗心として、戸田くんの呼び慣れた方の名前を呼んだ。
戸田くん、なんて。そんな距離感のある呼び方よりも、こっちの方がしっくりくる。
だって私たちは……付き合っていたのだから。