Music Art Fair

紅葉編

 こんにちは。僕の名前は香山雪乃です。将来はピアノでご飯を食べたいと思っています。
 僕の家族は芸術一家です。だからか、皆ちょっと変わっています。今日はその中でも一番何を考えているか分からない三女の紅葉を紹介します。



 紅葉姉さんは県外の高校に入って寮生活で中々家に帰って来ません。大学もロシアの大学でバレエの勉強をするそうです。
 姉さんはバレエダンサーとは思えない程無表情です。でも、踊る時だけは表情豊かで、僕は姉さんが七歳の発表会の時に大泣きした事を覚えています。
 そんな姉さんは大人しいです。口数も少なく、何を考えているのか分かりません。
 でも、たった一つ、姉さんが考えている事が分かる事があります。その時の姉さんの瞳と云ったら、信じられないくらい輝くのです。それは、僕を女装させたい、と思う時です。
 紅葉姉さんは男の子を、取り分け僕を女装させるのが大好きです。帰って来る時にはいつも僕のサイズぴったりの洋服を買って来ます。ピンクのレースの沢山付いたドレスを買って来た時には泣きそうになりました。
 そんな姉さんが今回買って来たのは、姉さんの高校の制服でした。紺色のセーラー服に白いラインと赤いスカーフがお洒落です。いえ、そんなのではなくて。
 僕より姉さんの方が大きいです。情け無いのですが。なのに、姉さんは僕にぴったりの制服を持って帰ったんです。
「止めてくださいよぉ!」
「駄目。」
 僕が逃げようとしたら、姉さんが僕の上に乗っかりました。此処は姉さんの部屋なので、逃げられそうにありません。
 家庭内暴力です。家庭内虐めです。Domestic Violenceです。
 やっぱり、僕は姉さんに敵わなくてその制服を着せられてしまいました。それでお使いに行って来いと言うのです。紅葉姉さんは変態です。
「じゃあ、一緒に行きましょう?」
 僕があまりに嫌がっていると、姉さんはそう言いました。でも。
「雪乃ちゃんはAAAカップよね?」
 下着専門店なんて反則です。
< 12 / 17 >

この作品をシェア

pagetop