雪の足跡《Berry's cafe版》

 すると八木橋は茶封筒をしまい、代わりにジャケットの左ポケットから何かを取り出した。淡い水色の5センチ四方の小箱。白いサテンリボンで飾られている。


「多分、受け取らねえと思ったから。これ」


 八木橋は今度はその小箱をズズッと差し出した。


「開けろよ」


 私は訳が分からず、その小箱を手に取り、リボンを解く。そしてその箱を開けると、中にはキラキラと光る小さな物体が入っていた。二組のピアス。


「私に……?」
「俺、そういうのはよく分かんねえから店の人に相談して決めたけど」
「店の人?」
「ああ」


 その店員は八木橋に私について質問をした。そして八木橋はそのまま答えた。名前がユキで、雪の結晶が好きで、爪はピンクかパステルオレンジに塗っていて、歳は28で、調剤薬局で事務をしていてと店員に伝えると幾つか品物を出してきた。その中から選んだ、と八木橋は言った。


「28……?」


 スクールの申込書には27歳って記入したはず……なのに。




「誕生日なんだろ、今日」


 八木橋は頭を掻きながらボソリと言った。


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