雪の足跡《Berry's cafe版》

 そこへカフェの店員がやって来てテーブルにケーキを二つ置いた。ロールケーキ、多分酒井さんが言ってたケーキ。しかも私の前に置かれたロールケーキには細いキャンドルが3本差し込まれ、明かりが燈されていた。店員は、おめでとうございます、と笑顔で私に言うとテーブルから離れた。


「……俺がケーキを食いたかったんだよ。早く消せよ」
「言われなくても消すわよ」


 その揺らめく火を吹き消した。


「……おめでと」


 八木橋は恥ずかしそうに吐き捨てると、フォークを握りロールケーキにかぶりついた。

 ケーキを食べ、カフェを後にする。ミニコンビニで必要なものを買い、八木橋の部屋に戻った。八木橋はクローゼットの上の段から布団を出して敷き、下の段の引き出しから部屋着を出して私に貸してくれた。そして自分の部屋着やら下着を出すと部屋を出ようとする。


「ヤギ?」
「バイトの相部屋で寝るわ」
「え?」
「一緒に寝る訳にはいかないだろ……アホ」


 そう言ってドアを開けるとドアの向こうに消えた。






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