雪の足跡《Berry's cafe版》

 八木橋の敷いた布団は八木橋の匂いがした。


 翌朝、八木橋は朝食を運んで来ると鍵を私に預けて技術選に出掛けた。鍵は酒井に渡せ、気を付けて帰れ、と無愛想に言い、出て行った。

 昨夜もらったピアスを眺める。八木橋の気持ちが分からない。私は、気持ちが無いなら期待させるようなことはしないで、と言ったのに、何故こんなことをするのだろう。私の気持ちを知ってて、わざと構う。そんな八木橋は私を飼い殺しにして楽しんでるようにも見える。


「鬼だよ……」


 私は朝食を食べ終えると支度をして八木橋の部屋を出た。酒井さんを探しにスクール小屋に行く。酒井さんはウェアを着ていない私を見て、今日は滑らないの?、と聞いてきた。私は母が心配してるから帰る、と言った。


「ヤギが酒井さんに預けてくれ、って」


 私は部屋の鍵を手渡した。


「預かるね。というかそのまま俺が持ってるけど」
「合コンするのに、ですか?」
「あ、違う違う。飲んだ時とか昨日みたいに通行止めになった時にヤギの部屋に泊めてもらうんだ」
「ヤギが昨日言ってたから、てっきり合コンかと……」
「ああ、あの日はね、たまたま。隣のスナックで合コンしようとしたら満席で入れなくてさ」


 そうそう、あの時だよ、青山さんが帰る前の日、大晦日だったよね、と酒井さんは言った。


「年越し合コン、ですか?」

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