雪の足跡《Berry's cafe版》

 母は昨日今日の技術選県予選の労いをし、結果を聞くとたいそう喜んだ。ええ、そう、と相槌を打ち笑顔で八木橋の話を聞く。母は次の地方予選の日程まで聞き出し、昨日の礼を言った。本当にありがとうございました、ユキもどんなに心強かったか、感謝します、と。私なんかより何倍もの時間を八木橋は母と話している。ロリコンの他に熟女も、守備範囲の広さに呆れた。


「でね、是非お礼をさせていただきたいの」


 お礼、きっと何か好みを聞き出して何かを送るのだと思った。そんな遠慮なさらないで、ユキの命の恩人なんだし、ねえお酒は日本酒?、とオバサンのごり押しで八木橋に迫る。


「じゃあユキに日本酒を持たせるから、再来週が地方予選なら来週はいらっしゃるのよね?」
「ええっ!、母さん??」


 母は、いいのよ、ユキはスキーに行きたいだろうし、私も八木橋さんのところなら安心だから、と私の都合も聞かずにまくし立てる。


「母さんっ!」


 どんな顔して八木橋に会えばいいのか分からない。プレゼントを用意していたかと思えばしょうがないから泊めたと言われた。母さん勝手に決めないで!、と横で口を出すと、ユキ、こういう時はちゃんとお礼しないと駄目よ、と諭される。母は八木橋にもう一度礼を言うと通話を切った。

< 120 / 412 >

この作品をシェア

pagetop