雪の足跡《Berry's cafe版》

「別れた原因って……?」
「ヤギも29だしさ、その先のことを考えてたんじゃないの?」


 雪が苦手な元カノを無理矢理ここに縛り付けたくなかったんだろうね、と言って酒井さんはコーヒーを啜る。先のことを考えて出来たトラウマで悩んでるって、私とも先を……?


「さ、先のこと、って……」
「ヤギもフライングだよねえ」


 酒井さんはニコニコとからかうように笑う。あ、ブラウニーご馳走さま、お母さん上手だね、と母の話になる。“娘がお世話になります、スクールの皆さんで召し上がってください”と一筆箋に一言添えてあり、皆で摘んだらしかった。母が八木橋だけのために作った訳じゃないことにホッと胸を撫で下ろしたけど、八木橋のトラウマが気になり、どうにも落ち着かなかった。八木橋に問い質したい、でも私のせいで怪我までさせて、更にあんなキツいことまで言われて、八木橋に会いに行く気にはなれなかった。






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