雪の足跡《Berry's cafe版》
八木橋は少し腕を緩めた。顔が近付く。キスをする。触れるだけのキスを何度もした。背に置いた筈の八木橋の手が私の後頭部に移動する。キスは向きを変え何度も何度も重ねてるうちに熱くなる。
「ヤ……」
八木橋がキスを辞めて唇を離した。と同時に押さえ付けられてた手も離れた。
「……止められなくなる」
「と、父さん見てないし母さんも出掛け、た……」
密着していた私の体と八木橋の体に空気が入ってヒンヤリとした。さっきまでの熱い唇や手の平が嘘だったみたいに突き放されたように感じる、距離。八木橋は俯いて髪を掻きあげる。
「……持ってねえし、アレ」
なあコーヒー、途中だったろ?、と八木橋は私に背を向けて部屋を出ていこうとした。
「ヤギっ」
私は咄嗟に八木橋の背中を掴んだ。シャツを引っ張られた八木橋が少しふらつく。何故そんなことをするのか自分でも分からない。ただ、八木橋と離れたくなかった。一瞬でも離したくなかった。みっともないって思う、なんか女からせがんでるみたいで恥ずかしいと思う。それでも誰かと触れていないと自分が壊れてしまいそうで、温もりが欲しくて、八木橋の背中に縋り付いた。何処でもいい、八木橋の手でも指でも上唇の先でもいいから触れていて欲しかった。