雪の足跡《Berry's cafe版》

 同じさいたま市在住、都内の一流大学卒、長男、歳は私より一回り上、地方公務員、趣味はスキー、ゴルフ。


「ユキも彼氏がいるみたいで、と断ったけど見るだけでもお願いしますって引かなくて」


 母さん後で返してくるから、とアルバムを封筒に戻して部屋に入って行った。八木橋もこんなふうに履歴書と写真を用意してくれたらと思う。別に有名校出身であって欲しい訳じゃない、誕生日だって星占いを100パーセント信じてる訳じゃない。安定した職業とかじゃなくて、実家が近いとかじゃなくて、ただ不安だった。八木橋は私の誕生日も血液型も住所もスクール申込書を見て知ってる、私の母にだって叔父叔母にだって面識もある。なのに私だけが何にも知らなくて、先の見えないトンネルの中でエスカレーターに乗せられたような気分だった。






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