雪の足跡《Berry's cafe版》

 夕飯に出前の寿司を取り、しばらくして皆は帰って行った。ゴールデンウイーク、八木橋は仕事だろうか。一緒に春スキーなんて無理かなとため息をついた。テーブルを拭き、後片付けをしながら私はあの封筒の事を思い出した。


「ねえ母さん、あの封筒何だったの?」


 ああ、あれ?、気にしなくていいわよ、と母は洗い物をする。


「何か揉め事?」


 そんなんじゃないわよ、と母は笑った。


「だって気になるじゃない」
「そう? じゃあ絶対気にしないって約束してちょうだい」
「うん……」


 母はタオルで水気を取り、部屋に封筒を取りに行った。そしてダイニングテーブルにそれを置く。私は拾い上げて中を取り出した。


「……」
「そういうこと」


 母は私が手にした仰々しいアルバムを取り上げながら笑う。


「お見合いなんてする気、無いでしょう?」


 中にはスーツ姿の男性の写真。コーデュロイのアンティークな椅子に腰掛け、口を一文字にして座っている写真。そして履歴書のような紙切れも挟まれていた。

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