雪の足跡《Berry's cafe版》

「以心伝心って無えのか?、アホ」
「ア……あるわけ無いでしょ! アホアホ言うデリカシーゼロの男の考えてることなんてっ」


 一緒に病院に行くつもりなのは分かったけど、わざわざ4時間も掛けて来てもらうのも気が引けて突っぱねた。


「……ひとりで大丈夫だから」


 だからアホ、と八木橋は言う。


「明後日、午後。そっちに行くから」


 八木橋は、腹出して寝るなよ、酔っ払ってコケんなよ?、と言って通話を切った。夕飯出来たわよ、と階下から母の声がする。部屋のドアを開けると酢の匂いがした。

 母に、明後日の午後に八木橋が来ることを告げて食事を始めた。母は、じゃあ夕飯も食べていくかしら、何がお好きなのかしらね?、と献立を呟く。嬉しそうだけど何処か寂しそうにも見えた。






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