雪の足跡《Berry's cafe版》

 あれから数日、私は私に起こった出来事を調べた。ネットでそういった専門のサイトや個人ブログを読み漁り、化学的妊娠・流産は妊娠判定薬が手軽に入手出来てから認知されるようになったこと、そして私と同じ経験をした女性が沢山いることを知った。勿論、その後にちゃんと妊娠し出産してるのも分かった。中には本当の流産を繰り返し、悩み苦しんでる人達が沢山いることも知った。あの時、焦ってパニックになって医師に看護師に噛み付いたことを反省した。


『……恋雪はまた、俺達のところに舞い降りて来るから』


 あの時、電話口で八木橋はそう付け加えた。


『恋雪、恋雪って。だから男の子だったらどうするのよ』
『男って気がしねえ。絶対女の子だ!』


 その絶対的な確信は何処から来るのか、思わず吹き出した。


『ヤギ、ロリコンだよね』
『アホ。そんなんじゃねえ』
『そう? すっごく怪しい』


 うるせえ、と八木橋が怒る。八木橋は仕事に戻るからと通話を切った。

 どんなに泣いても八木橋は笑わせてくれる。笑う前に怒らせることもあるけど、それは私を奮起させるためにわざわざ癪に障る言い方を選ぶのも分かってきた。その安心感から私は多分、八木橋の前では素直に甘えるのかもしれない。

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