雪の足跡《Berry's cafe版》
 初雪の中で式を終えたあと、ホテル館内に移動して披露宴が行われた。両家合わせて70人程度の小さな披露宴、会場もこじんまりとしていたけど生花やテーブルクロスに彩られ、華やかだった。菜々子一家もギリギリに到着して八木橋と胸を撫で下ろしていた。菜々子に花束を頼んでいたから。

 披露宴は八木橋の上司、薬局長の祝辞から始まり、乾杯、食事、友人代表の挨拶と進んでいく。酒井さんが八木橋をからかい笑いを取った。新郎が目隠しをされた状態で新婦の手を当てるというゲームで見事私を当てたものの、目隠しを取る前に私と友人を入れ替えられ、罰ゲームを受けたり、八木橋は散々だったけど嬉しそうだった。お色直しはする予定ではなかったのに、母が内緒で色ドレスを手縫いしていて、サプライズでそれを着た。少し冷めた色のピンクの生地、私には絶対似合わないと思ってたのに母はそれを選んだ。鏡に映る自分を見て、母は良く見てると思った。肌色が明るく見えた。

 そのあと、菜々子からの新郎新婦への花束贈呈。花束を抱えた菜々子がスポットライトを浴びて歩いてきた。ボロボロと涙を零している。菜々子はまず私に花束をたたき付けるように手渡したあと、八木橋には優しく渡した。呆れながらその様子を見ていたら突然、菜々子は八木橋を平手打ちした。菜々子にすれば当然だと思う。あの八方尾根で私にプロポーズする前に八木橋は菜々子にもプロポーズしていたのだから。会場は一瞬静まり返ったけど、八木橋が菜々子をぎゅうっと抱きしめ宥めて抱き上げると菜々子は機嫌を直した。


< 389 / 412 >

この作品をシェア

pagetop