雪の足跡《Berry's cafe版》

 ユキちゃんスキー行ったんだって?、と父方の叔父に聞かれた。久々に道具も新調して東北のスキー場に行ったと話した。あそこは景色が良いでしょう?、と行ったことのあるらしい母方の叔母が言う。晴れると眼下に広がる湖が綺麗ですね、露天風呂からの眺めもいいですよ、と返した。露天風呂いいねえ!、と温泉フリークの父方の叔父はそこに反応した。ユキちゃんパンフレットあるかい?、と言われ部屋から持って来くる。叔父に差し出すと皆が覗き込んだ。


「へえ……」
「いつだか夏に行ったけど、露天風呂なんて無かったわねえ」
「5年前に作ったそうですよ。新しくて綺麗でした」
「食事はどう?」
「あ、私はミニキッチンのある部屋にして自炊してたから食事は……」


 皆が再びパンフレットを覗き込む。バイキングか、カニもあるぞ、ステーキもあるわね、姉さんの好きなエビチリも、いいわねえ、行きたいわね、いいねえ、と叔父叔母は母も巻き込んで話し始めた。そして皆で目を互いに合わせた。


「行くか」
「行きましょうか」
「そうね」
「じゃあ決まりだ! 善は急げ、だ。今週末はどうだ? ユキちゃん案内してよ」
「えっ??」
「私も若い頃は雪道も平気だったけどしばらく行ってないしユキちゃんが運転なら助かるわ」
「や、でも私の車は……」
「ならうちの息子のなら7人乗れるぞ」


 勢いのある団塊の世代。言い出したら止まらないのはよく知っている。
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